相続登記を放置したままの方へ|2027年3月31日の期限と今からできること

親が亡くなってから何年も経つ。実家の名義は親のままだと思うけれど、そのままになっている。思い出すたびに気にはなるものの、何をどうすればいいのか分からず、また日が過ぎていく。

こうした状態の方は、決して少なくありません。

そして、お伝えしておきたいことがあります。何年経っていても、何十年経っていても、相続登記の手続きは今から進めることができます。

ただし、2027年3月31日という期限が近づいています。このページでは、その期限の意味と、今から何をすればいいのかを整理します。

珍しいことではありません

まず知っていただきたいのは、相続の手続きを長く放置している不動産は、全国に非常に多くあるということです。

国の調査では、登記簿を見ても所有者の所在が分からない土地は全国の土地の23%に及び、その面積を合わせると九州よりも広いといわれています。そして、その発生原因の63%は、相続の際に名義変更(相続登記)が行われないことです。※3

つまり、これは個人の不注意というより、長年にわたって起きてきた社会全体の問題です。相続登記が義務化されたのも、この状況を解消するためでした。

後ろめたさを感じる必要はありません。当事務所でも、こうしたご相談をお受けしています。

期限は2027年3月31日です

2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象となる可能性があります。※1

ここで重要なのが、この義務化は、過去に発生した相続にも適用されるという点です。

たとえば2000年にお父様が亡くなり、その土地を相続したものの登記をしていなかった。こうしたケースも対象になります。何十年も前の相続であっても例外ではありません。

過去の相続については3年間の猶予が設けられており、2027年3月31日までに相続登記を申請すれば、義務を果たしたことになります。なお、相続を知った日が2024年4月1日より後の場合は、知った日から3年以内が期限となります。※1※2

放置している間に、手続きは難しくなっていきます

期限や過料の話とは別に、お伝えしておきたいことがあります。

相続の手続きは、時間が経つほど複雑になりやすくなります。特に、その間に新たな相続が発生すると、関係者が増えた状態から元に戻すことはできません。

相続人が増えていく

いちばん大きいのがこれです。

たとえばお父様が亡くなり、相続人がお母様とご兄弟2人だったとします。この時点で手続きをすれば、関係者は3人です。

ところが手続きをしないまま年月が過ぎ、お母様も、ご兄弟の1人も亡くなったとします。すると、その方たちの相続人(配偶者やお子様)が新たに関係者として加わります。関係者が5人にも7人にも増えていきます。

これを数次相続といいます。遺産分割の話し合いで不動産を引き継ぐ人を決める場合は、原則として関係者全員の合意と書類が必要になるため、人数が増えるほど、書類を集めるのも、話をまとめるのも難しくなります。

顔も知らない親族と話し合うことになる

関係者が増えるということは、面識のない方が含まれてくるということでもあります。

いとこの配偶者、会ったことのない甥や姪。そうした方々に連絡を取り、事情を説明し、書類に署名をいただく。決してできないことではありませんが、時間も気力も要ります。

戸籍の収集に時間がかかる

相続の手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべて集める必要があります。数次相続になっていれば、亡くなった方の人数分だけこの作業が発生します。

古い戸籍は手書きのものもあり、読み取りに専門的な知識が必要な場合もあります。

こうしてみると、早めに着手するほど、手続きが複雑になるのを避けやすいことが分かると思います。

期限に間に合いそうにない場合

「話し合いがまとまりそうにない」「相続人が多すぎて3月31日までに終わる気がしない」

そう感じている方もいらっしゃると思います。その場合に使える制度があります。

相続人申告登記といって、法務局に対して「自分がこの不動産の相続人である」と申し出る手続きです。相続登記の義務を簡易に果たすための制度で、相続人の一人だけでも申し出ることができます。期限内に申し出れば、申し出た方は義務を果たしたものとして扱われます(ほかの相続人の分もまとめて申し出ることもできます)。※1※4

ただし、注意点があります。

申し出をしても、不動産の名義が相続人に変わるわけではありません。そのため、不動産を売却したり、担保に入れたりするには、別途、相続登記が必要です。また、その後に遺産分割がまとまった場合は、まとまった日から3年以内に、その内容に基づく相続登記を申請する必要があります。※1※4

話し合いに時間がかかりそうな場合に、まず期限内の義務を果たしておくための方法と考えてください。

今からできること

では、実際に何から始めればいいのか。今日からできることをお伝えします。

1. 不動産があるかどうかを確認する

まず、亡くなった方が不動産を持っていたかどうかを確認します。手がかりになるのは次のようなものです。

  • 権利証(登記済証・登記識別情報通知)
  • 固定資産税の納税通知書
  • 不動産の売買契約書

固定資産税の納税通知書は、毎年春に市区町村から届きます。亡くなった方の名義のまま届き続けているようであれば、その不動産は、相続登記がされていない可能性が高いです。

また、2026年2月2日から「所有不動産記録証明制度」が始まり、亡くなった方が全国に持っていた不動産を一覧にした証明書を、相続人などが法務局で請求できるようになりました。どこに不動産があるか分からない場合の手がかりになります。※1

2. 相続人が誰かを把握する

現時点で、法的な相続人が誰になるのかを整理します。すでに亡くなっている方がいる場合は、その方の相続人も関係してきます。

ご自身で分かる範囲で構いません。「たぶんこの人たち」という段階で十分です。

3. 分からないまま相談する

正直に申し上げると、1と2が分からなくても相談はできます。

「実家の名義がどうなっているか分からない」「相続人が何人いるのか分からない」。そうした状態からお調べするのも、司法書士の仕事です。

むしろ、ご自身で調べようとして時間だけが過ぎてしまうより、分からない段階でお声がけいただいたほうが早く進むことが多いです。

何年経っていても、相続登記はできます

冒頭にも書きましたが、もう一度お伝えします。

相続登記は、何十年前の相続であっても、関係者が何人に増えていても、今から手続きを進めることができます。ただし、相続放棄のように、期限を過ぎると選べなくなる手続きもあります。

ただ、時間が経つほど手間は増えます。だからこそ、気になったこのタイミングで一歩進めていただければと思います。

当事務所の初回のご相談は60分まで無料です。「何年も放っておいてしまった」という状態でも、まったく問題ありません。まずは現在の状況を一緒に整理するところから始めましょう。


参考資料・出典

※1 政府広報オンライン「不動産の相続登記義務化!過去の相続分は?所有不動産を一覧的にリスト化する新制度も開始!」(2026年9月25日確認)
※2 日本司法書士会連合会「相続登記義務化でどう変わる? 期限や過料を徹底解説」(2026年9月25日確認)
※3 政府広報オンライン「所有者不明土地 相続や住所等の変更の未登記により全国で発生」(2026年9月25日確認)
※4 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(2026年9月25日確認)